※この記事は、1枚の完成イラストから架空のライト文芸小説の「プロット・帯デザイン」を逆算して構築した、制作の思考プロセスを解説したノートです。
①この作品を制作するまでの経緯
まずは、この制作ノートに目を通して頂きました事に深く御礼申し上げます。
絵のお仕事を開始した当初はスキルマーケットに似顔絵アイコン等を出品したりforiioにてポートフォリオの充実を図りながら日々を過ごしていました。
なかなかご依頼が来ない💦…と思ってた頃、foriioのクリエイターマッチングにて某大手アパレル企業様のプレゼン用コンセプトアートのお話を頂き過日無事納品させて頂く事が出来たのですがNDAの兼ね合いで実績としてポートフォリオに公開する事が出来ず、もどかしい思いをしておりました。
そこで"自分の持つ技術力と、本への愛を形にした実績を公開したい"その思いに突き動かされ前々から挑戦してみたかった書籍の装画・装丁(帯デザイン含む)のサンプルを作成するに至りました。
②装画(卵が先かニワトリが先か)
こちらの装画、じつは元絵がございます

とある3人組のテクノポップユニットのメンバーの中のおひとりの、誕生祝いのファンアートとして描きあげたものになります。
リアル寄りの描画と自分の絵柄のテイスト(特に顔周り)のハイブリッド…おかげで(?)誕生祝いのキャプションを除くと昼下がりにアフタヌーンティーを楽しむひとりの女性の一枚絵として成立し、思い入れのある作品でもあるのでこちらを元に装画・装丁を行う事に致しました。
※リアル描画全振りの作品を数点ポートフォリオ内に掲載しておりますので、お目通し頂ければ幸いです。
「担当させて頂く小説の世界観を的確に捉え作品、ひいては主人公の魅力を余すことなく装画に込めて装丁していく」
今回の装画・装丁シミュレーションでは全く真逆の…
「既に存在する一枚絵にある情報を読み取り、架空の小説を創造し、それに基づいて装丁していく」
手法を取ってます。
③装丁(架空の小説爆誕前夜)
・トリミング

文庫本サイズのアスペクト比にトリミングする際は、主人公(女の子)を主軸にしつつタイトルと著者そして帯が被さるスペースを考慮しながら行いました。一生懸命描きあげたお茶菓子とティーカップ、眼鏡も活かしたかったのでこの様にトリミングしてます。
この時点ではまだ"ティータイムが大好きな女の子が主人公"だけが頭の中に漠然と浮かんだ状態でした。
・タイトル及び著者
さて、装画を眺めつつこの女の子にどの様な彩りを与えようかと思案した結果…
"ティータイムが大好きで、天気が良い日はお茶を嗜む様に軽やかに謎を解く女の子の物語"として
"探偵日和。(たんていびより)"というタイトルが思いつきました、思いつきましたが……

悩んだ末、探偵という文字を外した際の発音が可愛いかったので主人公の名前に転用し、あまり捻りを加えずストレートに"日和(ひより)さんの事件簿"というタイトルにたどり着きました。
著者についても、私自身が海辺の街出身ということもあり七つの蒼い海という意味を込め"蒼井ななみ"という架空の作家さんを創造したのですが…既にこの名義でX(旧Twitter)に登録されている方がいらっしゃったので、他に同名義の方が存在せず遥かなる蒼い海の意味をもつ"蒼海(そうみ)はるか"という作家さんが誕生しました。

日和さんの雰囲気に合わせる様に上品な明朝体を選択、タイトル表記としてスタイリッシュなテイストを付加すべく右上がりに変形させてます。
著者名は同じフォントを変形させずにそのまま利用、読者の皆さまに主人公と作家さんの名前を印象付けるため、"日和"と蒼海"にはルビを振ってます。
④帯制作(愛すべきポンコツ可愛いヒロインの誕生)
丹精込めて描いた手前の小物が見えなくなるのに躊躇いながらも…装画の雰囲気に合わせた薄めのピスタチオグリーンを使い一般的な幅で帯を設けたら、ちょうど日和さんが帯に肘をついて此方を眺めてる風になったので結果オーライ(でも、帯デザインとしてうっすらとレイヤードさせました)
あとはここにキャッチコピーとリード文を!!!…
はい、プロットが無いとどちらも書けませんよね💦
ということで、まずは日和さんの設定を掘り下げて行く所から着手してみました。
既にティータイムが大好きというキャラ造形があるので、タイトル案変更に伴い日和さんから謎解きする役割りをあえて外しました…が、おかげで勢い良くプロットが整ってしまいました。
・謎解きポジションとして探偵さんを創作、彼は探偵としては優秀だけど実生活では浮世離れしている
・とある事件に巻き込まれた日和さんを探偵さんが助ける(序章)
・その事がきっかけで探偵さんに好意を抱いた日和さんが彼の事務所にアルバイトとして押しかけてくる
・探偵さんからなぜ此処でバイトするのか問われた時の為に司法書士を目指してるからという口実を作る
・主人公はあくまでも日和さんだけど、謎解きは探偵さんに任せて自身はストーリーテラー的な立ち位置で物語が進む
以上を踏まえて出来上がった帯が此方になります

キャッチコピーはタイトルと親和性を持たせるため同じフォントを使用
タイトルとリード文、縦横に配置された文字列の中にタイトル文字を変形させた角度に合わせてキャッチコピーを配置し勢いを付けました。
リード文には上記プロットの要約を、そしてキャッチコピーには大好きな探偵さんの傍に居たいが為に司法書士を目指すという日和さんのポンコツ可愛い部分と強かさをおまかせの文字の下に"丸投げ"という文字を敷いて表現してます。
かくして、事件簿という体裁を取りながら実質は彼(探偵さん)の事を語る日和さんの惚気ばなしが完成いたしました。
⑤終わりに
この制作ノートを最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
企業案件でのコンセプトアート制作のような、与えられたプロットを的確に視覚化する仕事はもちろんのこと、今回の自主制作のように「一枚のビジュアルから豊かな物語や商業デザインを逆算・提案していく開発力」も、私の強みだと考えております。
新規作品の立ち上げや、世界観の構築に並走できるイラストレーターをお探しの際は、規模の大小を問わず、いつでもお気軽にお声がけいただけますと幸いです。
どのようなジャンルの書籍であっても、その世界観を的確に捉え、読者の五感に触れるような装画・装丁をお届けいたします。
素晴らしい物語を、最高のビジュアルで読者へ届けるお手伝いができる日を、心より楽しみにしております。
