「旅を仕事にする」という自由なライフスタイルに世間が注目し、多くの若者たちが実現すべく挑戦を始めた2015年頃。現在プロライターとして活躍する中村洋太氏は、海外ツアー添乗員として、世界各国の様々な街や観光名所を巡りながら仕事をしていた。

2017年(当時29歳)にライターに転身した後は、徒歩で東京から大阪へ「東海道五十三次600kmの旅」、自転車でアメリカ西海岸縦断の旅をするなどアクティブな挑戦を続け、自身のブログで旅中の出来事を発信し始めたところ、フリーランス5ヶ月目にして、ウェブメディア『TABI LABO』での連載が決定。

同メディアで掲載した、『ベルギーのホテルのおばちゃんに、「典型的な日本人め!」と怒られた理由』という記事は、Facebookで3,000いいね以上を獲得しヒット作に。
多くの人に経験がある「恋愛の体験記」であれば話は別だが、行った人にしかわからない「旅の体験記」は、書き手の目線に共感するのが難しく、離脱率が高くなるカテゴリーだ。それにも関わらず、中村氏の体験記は読み手に深く共感され、多くのシェアを獲得している。その理由は一体なんなのか?中村氏本人に話をうかがってみた。

━━さっそくですが、体験記で共感を得るために、心がけていることを教えてください。
「どんな状況で、どんなことが起こって、どんな感情になったのか」それをできるだけ細かく、具体的に書くようにしています。読者の頭のなかに浮かび上がるイメージの解像度は、高ければ高いほど、ストーリーに引き込みやすくなるので。
僕の身に起こった個人的な体験ではあるのだけど、記事の序盤で上手く情景をイメージしてもらえると、もう「知らない誰かの話」ではなく、「自分ごと化」して読んでもらいやすくなるんです。
体験記だからこそ、いかに自分目線になってもらえるかが重要です。
━━『ベルギーのホテルのおばちゃんに、典型的な日本人め!と怒られた理由』の記事でも、最初の段落でそれを意識されていますよね。

そうですね。この記事だと、「高級ホテルよりも安価な宿の方が心温まる体験が多く、より印象に残っている」と伝えるために、ベルギーのおばちゃんの話をする前に、スペインの小さな宿でオーナー夫妻の子ども達と仲良くなって、一緒に折り紙をしたエピソードを入れました。
唐突に「安価な宿が好き」と結論だけ書いても、具体例がないと共感されにくいですよね。「あぁそうですか」と他人事に思われると、読者はすぐに記事から離れてしまいます。
折り紙は、誰もが経験のある日本の文化的な遊びだし、外国の子ども達が折り紙で楽しんでいる姿を見るのは読者にとっても嬉しいことだと思います。記事タイトルとは関係ない話ですが、僕の抱いた感情を“自分ごと”に置き換えてもらうための大切なエピソードでした。

━━旅のなかには、観光スポット、料理、伝統、お店、ライフスタイルなど、切り取るポイントが無数にあると思うのですが、なぜ中村さんは「自分の体験」に絞って発信を始めたのですか?
実際に自分の身に起こって、気づいたことや感じたこと、その後どうしたか、という「リアルなストーリー」こそ、感情移入してもらえると思ったから……ですかね。僕は自分の記事を読んでもらうことで、例えば仕事終わりのサラリーマンでも、子育て中のお母さんでも、何か発見になったり、視点を変えて考えてみるキッカケを与えられたらいいなと思っているんです。
自分よがりな、「海外に行った人じゃないとわからないこと」を発信したいとは思っていません。自分にとって、視野を広げてくれたり刺激になったこと、かつ一番好きだったのが「旅」だっただけで、体験を書くにしても「これだから旅って最高だよ!!」を押し売りしたいわけじゃない。
あまり旅に行けない人に対しても、僕の旅を疑似体験してもらって、「読んでよかった」とか「背中を押された」というポジティブな読後感を届けたいと思っています。

━━『BizTERRACEマガジン』の副編集長になってからは特に、ビジネスマン向けのキャリア系記事の執筆がグンと増えていますよね。今後も旅についての発信は続けていきますか?
もちろん続けていくと思います!そろそろまた旅行にも行きたいですし。ただ、今主に担当している経営者の方々への取材原稿も、すごく学びが多くて、もっとたくさんの人に話を聞いて、エッセンスを届けたいと思っています。旅を通して学んだことがビジネスに生きることも多いですし、旅の経験が無駄になることはないですね。
フリーランスになって3年目。駆け出しの頃はほとんど仕事がなくて精神的に不安になったり、苦しいこともありましたが、少しずつ発信できるカテゴリーが増えていって、今では執筆業だけでなく、ユニクロさんの記事の中で商品モデルとして登場することもあったり、仕事内容は多岐に渡ってきました。
今後は「ライター×モデル」のように、ライターとかけ算できるカードをどんどん増やしていきたいなと思っています。
中村洋太プロライター https://www.foriio.com/nkmryota