分類:食肉目ネコ科
シートン大友の百獣画録 第14話「タテガミの役割は?」
第12話で「百獣の王」の称号について少々気不味い話をしました。カバの方がよほど恐ろしいではないか、と。しかし今回はライオンの名誉のために、彼らには彼らの基準があるという話をさせて下さい。雄ライオンの象徴といえば、あの立派なタテガミです。では、あのタテガミは何のためにあるのか。最近の研究で、ひとつはっきりと分かったことがあります。タテガミの色が黒い個体ほど、雌にモテるのです。
これはサバンナで行われた、なかなか大胆な実験で明らかになりました。本物のライオンと同じ大きさのぬいぐるみを用意し、色の薄いタテガミと黒いタテガミをそれぞれ付けて、雌がどちらに反応するかを確かめたのです。・・・サバンナのど真ん中にライオンサイズのぬいぐるみを置く研究者の度胸も中々のものですが、結果は明快でした。雌は迷わず黒いタテガミの方に近付き、性的反応を示したのです。相手がぬいぐるみであっても、黒タテガミなら好ましい。雌ライオンの審美眼は、顔よりもまずタテガミの色を見ているようです。
なぜ黒いタテガミがモテるのか。そこにはちゃんと理由があります。雄ライオンは戦いに勝って自信が付くと、男性ホルモンの一種「テストステロン」の分泌が活発になり、それに伴ってタテガミの色が黒っぽく変化していくのです。つまり、タテガミの黒さはそのまま「どれだけ戦いに勝ってきたか」の証明書のようなもの。人間で言えば、勲章や高級スーツに近い感覚かもしれません。ただし人間の場合、スーツは買えば手に入りますが、ライオンのタテガミは実力でしか黒くならない。こちらの方がよほど厳格な実力主義です。
第12話でカバに「百獣の王」の座を脅かされたライオンですが、こうして見ると、ライオンにはライオンの秩序がきちんとあるのだと分かります。強さの証が見た目に表れ、それを雌がしっかり見極めている。なるほど、王と呼ばれるだけのことはあります。・・・もっとも、タテガミの色が薄い雄たちの心中は、察するに余りありますが。