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制作ノート
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デジタルクリエイター桜木力丸が語る、『CHIP』PVの裏側とは
デジタルツールで個人が多様な表現ができるようになった今、音楽や映像、写真など、それぞれの表現手法の間に高いハードルはなくなっているのかもしれない。
自身をデジタルクリエイターと称する桜木力丸氏は、そんな時代に生まれたクリエイターだ。中高生時代から音楽活動を始め、それに必要な映像等、様々なクリエイティブのほとんどを自分で制作するようになっていったという。
同氏は2018年8月、アーティストやクリエイターをはじめとした誰もがファンクラブを作成できるアプリ『CHIP』のPVを担当した。桜木氏が本PV制作に込めた意図、そしてクリエイターとしてのキャリアについてうかがった。
プロフィール
桜木力丸
https://www.foriio.com/rikimaroot
デジタルクリエイター
1997年札幌生まれ。音楽や映像などマルチジャンルでの表現活動を得意とするクリエイターであり、株式会社RINACITA社外CCO(チーフクリエイティブオフィサー)。14歳からDTMをはじめとするデジタルツールを用いた音楽活動を開始し、慶應義塾大学環境情報学部進学後は制作の範囲を音楽のみならず映像や写真、デザインの領域まで広げる。直近のポートフォリオとしてはファンクラブ作成アプリCHIPのサービスPV映像(監督・映像・音楽を担当)や、シンガーソングライター山崎あおい氏のアーティスト写真等を手がける。
音楽をきっかけに、デジタル作家としての歩みを始める
——表現活動は、いつ頃からどのようなきっかけで始めたのでしょうか。
桜木:
僕は、モノを作る人という幅広い意味で ”作家”と表現しています。作家としての活動のきっかけは、中学を卒業した頃に始めた音楽活動でした。
音楽を制作したりライブ活動をする中で、同時にフライヤーや映像などさまざまな制作物が必要になったんです。僕はもともとモノを作ることが好きな性格もあり、それらを「自分で作りたい」という思いが強かった。だからPCなど手元にあったデジタルツールを駆使して、制作するようになりました。映像もその一環で自然と手掛けるようになりましたね。
デジタルなものづくりにのめり込んでいったきっかけは、14歳のころにジェットダイスケさんがYoutubeにアップしていた動画を見て興味を持った、MIDIコントローラーを購入したことです。Amazonで家に届いてから気づいたのですが、あれってPCに繋いで初めて音が鳴るものなんですよね(笑)。最初は、押しても押しても音が鳴らなくて。それがショックで、音の鳴る仕組みについて調べたり、自宅にあったPCでは重すぎて動かないこととかが分かっていくわけです。ここで面白さを感じ、デジタルなものづくりに惹かれていきました。
当時の僕は、あくまで音楽を中心に考えていて、映像はあくまで副菜的な存在でした。音楽で作った世界観をリッチにするための手段として用いていたんです。
——現在では、さまざまな映像制作を手がけられていますよね。映像制作を意識して行うようになったきっかけはありますか。
桜木:
映像を表現の中心におくことへの可能性を感じ始めたのは、大学入学後でした。メルカリのインターンシップでシアトルに行ったことがきっかけです。
現地でメルカリアプリの市場調査を任されたのですが、その成果発表資料の一部として映像を用いました。シアトルで生活する学生などから見聞きした情報を正しく伝え、自分の考えをピュアに届けるためには映像がふさわしいと思ったからです。
伝えたい情報をデザインする視点からの映像作りは、現在行なっているクライアントワークの映像制作でも活きる部分が多いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0LSRCEG_ToE
——音楽や映像、写真など表現方法には特化せず、さまざまな方法で制作を続けているのは、どんな理由があるのでしょう。
桜木:
「いいモノを作りたい」という意識が先にあって、そこを起点にモノづくりが始まっているからだと思います。現時点の僕の中で、いいモノを作るとは「自分がいいと信じるものを、特定の誰かに贈るように作ること」。迷うところでもあるのですが、現時点では明確に一つの手段に絞ろうとはしておらず、その場に最適だと判断するデジタル手段を用いてモノを作っているという感覚です。前提として、映像づくりも音楽づくりも、僕にとっては「好きなこと」。幸運なことにそれがそのまま仕事につながっています。
音楽を通じて知り合った方から映像の仕事をいただくとか、映像を通して知り合った方から音楽の仕事をいただくとか。僕の一つの側面を支持してくれる人が、他の面でも期待していただくことがあって。桜木力丸だからこそできるモノを作りたいと考えているため、今は何か一つに絞ることはしていないんです。そうすることによって僕の存在意義にもつながっていくのではないかなと。
何か始めたいと思った時に『CHIP』が思い浮かぶような映像設計
https://www.youtube.com/watch?v=8yT5Rvkuo8M
——今回制作された、ファンクラブ作成サービス『CHIP』のPVでも、監督・映像・音楽・ナレーションと全てを担当されていますよね。
そうですね。今回制作した『CHIP』のPVのように、複数の分野を任せていただけるのは、とても嬉しいことです。
監督を誰かにお願いしたり、映像の中で使用する楽曲のライセンスを購入したり、さまざまな選択肢があったと思います。しかし今回は、僕が描いた世界観に対して、より再現度の高い形でPVを作りたいと考え全てのクリエーションに関わる要素を僕が担当しました。制作した映像に、寸分の狂いもなく音楽やナレーションをつけたいと思ったんです。
最近ではYoutuberなど、制作にかかわる全てを自ら手がけ、思想がしっかり伝わるものを作り上げることがこれまで以上に評価されている傾向にあると感じていて。今回のPV制作は、その流れを最大限活かしたいと考えたことも、一貫して制作を担当した理由のひとつです。
——PVは、どのようなきっかけで制作することになったのでしょうか。
桜木:
RINACITA, Inc.代表の小澤くんとTwitterを通じて知り合ったことがきっかけです。彼はこれからの新しい時代に”作家”がどうやって活躍していくのかという視点で、よく考えを発信していましたいました。これは僕にとっても関心のあるトピックで、共感することも多かったです。
初めて会った時には音楽業界の課題について話しました。今って、CDは売れなくなっていますよね。CDからデジタルへ、最近ではサブスクリプションの時代に移っています。曲自体は売れなくなり、収入源はライブであることが多い。アーティストが生み出した作品自体がマネタイズできない現状があるんですよね。
彼は「生み出す人そのものにマネタイズする」ことを考えました。そうすることで、よりよい作品が生まれる環境作りをしたいと話していて。とても共感できる考え方で、ぜひお手伝いしたいなと思い、PV制作を担当することになりました。
——共感するポイントが多くあったのですね。今回のPVはサービスの機能訴求を行わず、イメージや思想を伝えるような映像になっています。どのような意図で制作されたんでしょうか。
桜木:
PVのターゲットは、ファンクラブを開設する側。特に若手のアーティストやクリエイターを想定しました。映像を見た人がそのまま『CHIP』のページを開設するのではなく、「なんかかっこいい」と感じてもらい、何か始めようと思った時に『CHIP』が浮かぶ。そんな順番が理想的なのではと考え設計しました。
『CHIP』に対して「なんかかっこいい」と思ってもらう必要があるのは、自分自身を通してマネタイズすることに抵抗のある人が、少なからずいると認識しているからです。
これは以前音楽家の山田KOHDYさんと話していたことなのですが、生み出す人そのものがマネタイズする例として、地下アイドルのチェキがあります。ファンと1枚500円とかで撮るんですよね。彼女たちの貴重な活動資金を生み出す仕組みとして、いいものではあるのですが、これをインディーズバンドがやるかというと、そうとは限らない。逆にダサいと思っている人もいます。避けなければいけないのは、ダサい手法であると捉えられることでした。
僕がこの映像で表現したかったのは、モノを生み出す人の情熱とかエネルギーとか。ダンサーを3名起用したのも、熱量を伝えるために最適な方法だと考えたからです。
映像を見た方からは「人間味がある」とか「体温を感じる」と感想をいただいていて。自分で全て担当したからこそ出てくる言葉なのかもしれないと感じています。
より広い視点で作品を捉え、提案・プロデュースを
——映像制作をはじめとしたクライアントワークを行う一方、最近では音楽をはじめとした自主制作プロジェクト「0240(トゥー・フォーティー)」も始められています。それぞれに、どのような意識で向き合っていますか。
制作には大きく分けてとアーティストとしての制作とクライアントワークがあると思います。その違いは自分の中から作品の基礎を作るのか、誰かの作品や事業に参加するのかということです。僕が自分で作品を作るとき、僕の役目は焦点をはっきりと示すこと、感情と意志を詰めることです。僕が誰かに依頼されて作品や事業に参加するとき、僕の役目は作品の焦点を掘り起こして、深みを見出すことです。
アートとデザインのバランスを案件ごとに認識することは物作りの基本です。作品を鑑賞する人が、自由に作品を受け取って解釈をするものをアートとするならば、音楽の活動は僕にとってまさにこの部分に相当することが多いです。反対に、ある感想を抱いて頂くことを目指して制作することをデザインとするならば、映像制作はこの部分に相当することが多いです。
クライアントワークはデザインの要素が強く、自分自身がゼロから作るものはアートの要素が強い。どんな制作にも作品の焦点があると考えているため、焦点をどのように認識するか、クライアントワークと自主制作で異なると考えています。
クライアントワークではその作品の焦点がどこにあるのかを認識し、そして当人は気づいていない焦点を見つけ出して、そこに深みを加えることを意識しています。『CHIP』のPV制作で言えば「CHIP始めたいな」と思わせるではなく「かっこいい」と思わせることが最初の焦点でした。
「0240」をはじめとした自主的な制作では、自分の感情や意思、表現したいコンセプトをしっかり作品に込めることを意識していて。そこが焦点になります。現在は音楽制作を中心に進めているプロジェクトで、今後は音楽に限らずダンスやデザインなど様々な領域の作家の方々を巻き込みながら、間口を広げて作品を作り続ける場にしていきたいと考えています。
「0240」の活動にもデザインの要素、クライアントワークにもアートの要素は必要だと考えています。二つをバランスよく認識して作っていくことが大切かなと。
——今後はどのようなクリエイターになっていきたいと考えていますか?
10年後はどうなっているか分かりません。ただ、今のやり方でキャリアを積んでいくと、音楽だけ、映像だけをやってきた人と比べると技術的な開きができていると思います。そう考えた時に自分の価値は、スペシャリストと組んで、より広い視点で作品を捉えていくことかなと。
僕はもともと音楽好きから始まって今のキャリアに至っていますが、好きなアーティストの新しいCDのアートワークのクオリティがあまり良くないものだと、悲しい気持ちになるんですよね。
ある特定の分野でいいと思っている人の作品が、他の視点から見てもいいと思ってもらえるような形に提案・プロデュースを行っていきたい。橋渡し的な視点をもっていくことが僕の役割かなと思っています。
桜木力丸さんのforiioはこちらから
https://www.foriio.com/rikimaroot
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クリエイティブの裏側に迫る制作ノートシリーズ
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