ライブしているミュージシャンは、美しい。曲に込めた思いや感情を自らの声に載せ、歌い上げるその表情。曲そのものに寄り添い、盛り上げるために楽器を奏でるその指先。メンバー同士の目が合ったときに、瞬間浮かび上がる言葉にならない会話。彼/彼女らの音楽を、愛とともに受け止めるオーディエンスとの一体感、、、
一方、多くの人が忙しそうに行き交う喧騒のなか、観客がいなくともひとり路上で歌うミュージシャンもまた、美しい。自らの身体と声をそこに投げ出して、誰よりも自分自身に賭けている。
「私は、今ここにいる!!」
歌を通じて、そう全身全霊で叫ぶ姿。そこにある不安定さ、不完全さは、誰もが自分の心の何処かに抱えているもののはずだ。それに気づいたとき、「彼/彼女らは自分の代弁者だった」とわかる。だから彼/彼女らは、いつも下を向いてただ足早に移動するだけの我々に「おい、気づけ!」と伝え続けるのだろう。
「お前も、今ここにいるんだ!!」と。
路上という、完全アウェーな不安定な場所でそれができるしなやかな強さ。彼/彼女らの美しさの本質は、そんなところにあるんじゃないかと思う。
自分はフォトグラファーとして、そうした本質を写し取りたい。
【写真:ざわちゃん 2024 渋谷】