『ふしぎなトラのトランク』(風木一人作 斎藤雨梟絵)は、ふしぎなトラ紳士が、人間界にふらりとやってきて人間たちのすることを経験するというお話です。もちろん、人間界にはちょっとした騒動が起こります。
人間とトラ紳士の間には意思が通じているような通じていないような?
ともあれ、トラ紳士は人間の世界が好きなようです。
この「トラ紳士」をどのように造形しようか考えた時、「人間界が好き」の「好き」にも種類があると思いました。
好きなものをなぜ好きか。どんな風に好きか。
食べると美味しいから好きだとか、便利だからと利用する対象として好きだとか、色々ありますが、この「トラ紳士」は人間界についてよくわからないものの、そこに敬意を払っています。
そこで連想されたのが、今年(2023年)の朝のドラマで話題の植物学者・牧野富太郎博士のエピソードです。牧野博士は山へ植物採集に行く時、「汚れても良い作業服」ではなく、まるで好きな人に会いに行くかのようにきちんと正装して出かけたと聞きます。植物界に最大の敬意を払っていたことを示す大変印象的なお話です。
トラ紳士の正装は人間界へのリスペクトの表れ。
私自身も、よくわからない他文化や、もちろん他種生物へのリスペクトも忘れたくないなと思いつつ、燕尾服のトラ紳士はすっかりお気に入りのキャラクターになりました。