人となりが見えると、仕事も頼みやすくなる  イラストレーター・サタケシュンスケが語るSNSの活用法

シンプルなデフォルメと控えめな色数ながら、ポップでフラットなイラストレーションを生み出しているイラストレーター・サタケシュンスケ氏。

「ベネッセ こどもちゃれんじ」の教材から求人サービスのマスコットキャラクター、書籍の表紙など、さまざまなジャンルで起用されており、そのイラストが老若男女問わず多くの人から愛されるものだということがわかるだろう。

また、サタケ氏は自身のTwitterで自作の線画を公開しフォロワーに塗り絵を楽しんでもらったり、「#もっとお金の話をしよう」というハッシュタグを使って、イラストレーターの賃金に関する建設的な議論を展開したりと、さまざまな形で自身の考えを発信するなどして、SNSを駆使してさまざまな試みを行っている。

そんなサタケ氏に、自身の経歴から「ベネッセ こどもちゃれんじ 教材」の制作秘話、SNSとの上手な付き合い方について、話を聞いたーー。

ーーサタケさんは広告制作会社でグラフィックデザイナーとして務めた後、フリーランスのイラストレーターとして活躍されています。動物のモチーフなども多く、ポップでフラットな作風が印象的ですが、デザイナーの頃から現在の作風だったのですか?

広告制作会社に務めていた頃は車関係の雑誌広告をメインに手がけていて、会社の仕事とイラストはまったくの別活動としてやっていました。というのも、僕のイラストは子どもや動物モチーフのものが多くて、「いかに車を格好良く見せるか」という男っぽいデザインとは対極にあったんです(苦笑)。

その会社は5年ほど務めたんですが、次第に「絵だけでやってみたい」という気持ちが強くなり、会社を辞めることにしました。当時は絵の仕事のアテがあったわけでもなく、無理だったら別の仕事を探そう、というくらいの気持ちでしたね。

ーーいきなりフリーのイラストレーターに転身する、というのはなかなか大胆だと思いますが……。その後、順調にお仕事をもらえるようになっていったわけですよね。

それまで付き合いのあった方々に会社を辞める報告をしていく中で、あるイラストエージェンシーの方から「会社を辞めたのであれば、頼みたい仕事がある」と言っていただけました。それは、保険会社のかなり大きな広告のお仕事でした。

その時、兼業でのイラスト活動と覚悟を決めた上での専業としての仕事だと、こんなにも出来ることが違うんだ、ということがわかったんです。確かに、発注する側としても兼業の人に大きな仕事は振りにくい。自分のスタンスが違うと、周りの対応も変わってくるんだ、と実感しました。

そのお仕事自体は上手くいって非常にありがたかったんですが、今考えると、金銭面を含めた条件などについて、こちらの要望などをしっかりと伝えるべきだったと、反省する部分もあります。広告の場合、掲載期間中は競合他社の仕事を受けられなかったりして、独立して初めて「絵を描く」以外にも気を使う部分がいろいろあるということがわかったんです。

ーーそれは“フリーランスあるある”かもしれません。サタケさんは現在「ベネッセ こどもちゃれんじ 教材」のイラストなどを手がけていらっしゃいます。この制作について、お話をうかがえればと。

ベネッセさんとはもう数年お仕事をさせていただいて、最初はデザイン会社の紹介でご一緒させていただきました。今では、さまざまな部署からお声がけいただけるような良い関係を築けています。

僕自身、ちょうど「こどもちゃれんじ」のターゲット層である子どもが3人いて、子ども向けの仕事に対する思い入れがすごく強くなってるんです。ベネッセの担当者さんともよく子どもの話をしますし、イラストのラフを子どもに見せてモニターになってもらったりしています(笑)。

ーーイラスト制作にあたって、“子ども向けのお仕事”ということで気をつけているポイントはありますか?

僕は動物をデフォルメして描くんですけど、極端に図形的に描いてしまうと、子どもには何の動物か伝わりません。また、自分の普段のイラストで使うような中間色を多くしてしまうと、子どもは何色の絵なのかが言葉で表現できなかったりする。そういった色使いやパッと目に入ってくる印象というのは、大人向けの作品とは違うということで気をつけています。

かといって、ただ子どもに受ける可愛いだけのものであれば、世の中にいくらでもあります。だから、子どもだけに媚びるのではなく、大人が見ても受け入れられる可愛さを盛り込む、というのは常々意識しています。

僕自身もそうなんですが、結局子どもに買い与えられるものは親が見ても良いと思ったものなんです。

ーー「子ども向けの仕事」の場合、その顧客には子どもだけでなく、親御さんも含まれている。そういった顧客のニーズをしっかりと捉えることは、仕事をしていく上で必要不可欠な能力ですね。

どんな仕事でも同じだと思いますが、そのためのヒアリングは重要ですね。

僕はデザイナーを経験したこともあってか、「需要に合った制作物を作る」という考え方が定着しています。僕自身のメッセージ性とかはあまりなくて、絵を必要としている人に対して、想像以上の形でそれに応えようと考える。それが楽しいんです。

もしずっと自分自身のためにイラストを描いていたら、この仕事は続けていなかったかもしれません。

自分も楽しめるようにSNSを使ったら、自然と輪が広がった

ーーイラストを仕事として続けていく以上、マーケティング的な視点はどうしても必要になると思います。サタケさんはTwitterといったSNSでも、積極的に発信をされていますね。

昔からSNSは使っていたんですが、最初は「こんな絵を描きました」と一方通行の投稿をするだけでした。でも、それだと自分も楽しくないと思い、ここ1年くらいはイラストの線画を塗り絵として公開してみんなに楽しんでもらったり、メイキング動画をアップしたりしています。

そうすると、新しく絵を見てくれる人も増えましたし、絵に関していろんな人と盛んに話ができるようになって、相互に楽しめるようになりました。今年2月に浅草で展覧会をやったんですけど、その時にもSNSをきっかけに足を運んでくれる方は多かったですね。

Twitterで多くの人が楽しんだ線画塗り絵

イラスト制作の過程を動画で公開

ーーSNSで、ご自身とフォロワーが相互に楽しむよう意識したきっかけは?

フリーランスだといつも1人で仕事をしているので、もっと自分の考えていることを発信して、それに対してみんながどう思うのか、というのを聞いてみたくなったんです。そこからディスカッションであったり、見てくれる人に楽しんでもらえるような取り組みをするようになっていきました。

最近では、Twitterで「#もっとお金の話をしよう」というハッシュタグを使って、普段なかなか喋りにくいお金の話題などについても話したりしています。同業者やクライアントの人から「そういう考え方もあるのか」といった気付きの反応をいただくこともあります。

そんなことをしていると、SNSを通じて、僕の人となりがわかってもらえるようになっていきました。どんな人間かがわかっることで、発注する側としても仕事を頼みやすくなる、ということもあるみたいです。変に着飾るよりも、自分のありのままを見せることで、自然と輪が広がっていきました。

僕の場合、変にブランディングや営業的なことは意識せずに、純粋に自分が楽しめるように発信していったのが良かったのかもしれませんね。

ーーサタケさんの最近のパーソナルワークとして制作されているアニメーション「Walking Animals」も、SNSを通じて制作されたと聞いています。

「Walking Animals」は、エディトリアルを中心に活動をされているデザイナーの宮島信太郎さんがモーショングラフィックを勉強しているとのことで、SNSで発表した僕のイラストを見て「練習として動かしたいので、使わせてくれませんか」とメッセージを送ってきてくれたのがきっかけでした。

それまで面識はなかったのですが、僕は神戸に住んでいて宮島さんは東京にお住まいだったので、一度Skypeでお話をしました。僕も「誰かが自分のイラストを動かしてくれたらな」と思っていたので、そこで需要と供給がマッチしたんです。「ウェブでつながって何かを作る」というのは初めてだったので、すごく新鮮でしたね。

ただ、今の時代はこんなふうに一緒に作品を作ることができて、その作品に対してさまざまな反響が集まってきたりする。これまでは1人フリーランスでやってきましたが、誰かと組んで何かを作るという可能性はどんどん広がっているように感じます。

今後はSNSを通じてでも、隣でタッグを組んでくれる誰かが存在する状況を作ることができれば、未知のジャンルの仕事でも、怖いことはどんどんなくなっていくのかなって。

ーー最後に、サタケさんは今後自分のお仕事、つまりはご自身のポートフォリオをどのようなものにしていきたいと考えていますか?

今は子ども向けだけでなく、大人向けのイラストだったりと、さまざまなお仕事をやらせていただいてます。ただ、そろそろ自分の代名詞となるようなイラストを作っていかないと、とは思っています。「このジャンルのイラストといえば、この人」といった際に自分の名前が挙がるように、専門分野を強くしていきたいです。

また、これからはイラストの分野でも海外の方が日本の仕事をしたり、日本の人が海外に出ていくことは増えていくと思います。なので、その波には乗っていきたいですね。

具体的には、駆け出しの頃の気持ちに戻って、仲間たちと一緒に「海外のイベント展示に絵を持っていこう」なんて話をしています。SNSがあれば世界中の人とつながることもできますが、やっぱり現地での直の声も聞きたい。そういったことは、今のうちにやっておきたいですね。

サタケシュンスケ イラストレーター 1981年 大阪府枚方市生まれ 兵庫県神戸市在住 広告制作会社勤務のグラフィックデザイナーを経て2007年に独立、以後フリーランスのイラストレーターとして活動を続けています。

主な仕事は広告、書籍等で使用するイラストレーションおよびキャラクターの制作、モチーフは人物や動物が中心。得意とするジャンルは子育てや教育、ファミリー向けのタッチです。

趣味はランニング、マラソン。自称「走るイラストレーター」。イラストレーターユニットなりゆきサーカスの一員としても活動中。

・京都造形芸術大学 非常勤講師(2011〜) ・ギャラリーVie 絵話塾 講師(2018〜) その他、いくつかのデザイン専門学校などで講義を務める

Adobe Stock プレミアコントリビューター naturalpermanent.com/illust/news/7928/

サタケシュンスケさんの作品集はこちら https://www.foriio.com/shunsukesatake

Twitter https://twitter.com/satakeshunsuke

Text: Michi sugawara / Photograph: Jouji Suzuki


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