「あら神様のお気にいり」は少し前までタイトルに「あら」がついていませんでした。この絵はそのときに描いたものです。なぜ「あら」が付いたかというと「荒神がよこしまな気持ちで身勝手にも手に入れようとしているお気に入りの災難な話」の方が面白そうだなと思ったからです。
白嘉殿という宮があります。政治を一手に担っている機関です。そこのトップ総裁が彼「清丞(せいじょう)」です。
容姿からもわかるようかなりの変わり者です。自己愛におぼれ、どんな罵詈雑言も、彼の耳を通れば己を賛美する言葉に変換されます。己の美しい姿を見せびらかしたくて、たびたび人前で「うっかり」を装い全裸で登場することがあります。頭脳明晰、スポーツ万能、長身で均衡のとれた美しい体躯、高い身分に高給取り、人々には慈悲深くよこしまな心も穢れもありません。しかし頭だけが残念、それが清丞です。
鬼族が地上を往来していた魍魎跋扈(もうりょうばっこ)の古の時代、鬼族を束ねる女帝がいました。羅刹王(らせつおう)とよばれたその女帝は古代種でありながら知能が高く、人々の恐怖の対象となっていました。しかし悪行を尽くした羅刹王も時の王にうたれ、わずかに生き残った鬼族は西山の奥地に逃げ隠れることになります。羅刹王が持っていた黄金の金棒は王に献上され、その後封印されました。封印されている宮がのちの白嘉殿となります。金棒には付喪神「羅刹」が憑いており、清丞はその金棒を密かに私物化しています。清丞は自分に「巫覡の素質」があることを隠しています。
