【短編】大汎天、もしくは神奈川市の歴史について|利賀セイク
2019年8月16日、旧鈴木邸から寅之助の手記が新たに発見された。虎之助は幕末から明治初期にかけて中国からアヘンを密輸していた記録が残っており、非現実的な描写もあることから不安定な精神状態の中で書かれたものであると推測される。以下は手記の抜粋である。 慶応二年長月。神奈川宿は攘夷の考えの強い地である故、神奈川湊が開かれた今、生麦のような揉め事が増えるであろう。しかし、これは異国人に限った話ではない。海からは道具や食品のみならず、ものの考え方も伝わって来よう。たとえ耶蘇教(キリスト教)を禁じようとも、教の心までは禁ずることはできまい。さすれば、これを受けた日本人もまた、この日本の在
https://note.com/sec_thugua/n/ne6e9a412fc60