ただ隣にいる 浅井美咲 | 『夜明けのすべて』特集 | nobodymag
映画の中盤、山添くんの恋人である千尋は、山添くんの家の前でばったり出くわした藤沢さんに「有り難うございます、彼と向き合ってくださって」と告げる。それに対して藤沢さんは「いえ、たまたま隣の席に座っているだけなので」と間髪入れずに答える。この「たまたま隣に座っているだけ」という表現は、山添くんと藤沢さんの関係を考えるとき、このうえなくしっくりくる言い方であるように思う。「向かい合う」のではなく「隣り合う」。二人は恋人になることはないし、友達だとも明示されない。切り返しがほとんど使われず、同じフレームの中に一定の距離を保って収まり続ける山添くんと藤沢さんは明らかな言葉で表すことはできないけれども、しかしたしかな関係を築いていく。
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