スクウェアは貴族でエニックスはヴァイキング? 人たらしでヒットに導く齊藤Pに見る“優秀なゲームプロデューサー”【齊藤陽介×藤澤仁×ヨコオタロウ×安藤武博:座談会】
2018年8月25日、スクウェア・エニックスの齊藤陽介氏が『ドラゴンクエストX』のプロデューサーを退任することが発表された。齊藤氏は、2012年8月からサービスが開始された『ドラクエ』初のオンラインRPGである『ドラゴンクエストX』(以下、ドラクエX)のプロデューサーとして、開発初期からずっと同作に携わり続けてきた。それだけでなく、2017年7月に発売された『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(以下、ドラクエXI)でも再度、『ドラクエ』ナンバリング作のプロデューサーを務めている。『ドラクエX』のプレイヤーにとって、齊藤氏は「よーすぴ」の愛称でおなじみだ。オンラインRPGという作品の性質もあり、齊藤氏は同作の公式ニコ生やイベントなどに“出たがりおじさん”と呼ばれるほど頻繁に出演している。『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』その意味で、齊藤氏は単なるプロデューサーという役職を超えて、『ドラクエ』の生みの親である堀井雄二氏と並ぶ『ドラクエX』の顔となっていた。その齊藤氏が今回『ドラクエX』から卒業するのは、同作のプレイヤーには大きな「出来事」と言えるだろう。一方で、ゲームプロデューサーとしての齊藤氏の活躍は、『ドラクエ』シリーズに留まるものではない。国産MMORPGの草分けである『クロスゲート』を2001年にリリースするなど、日本のオンラインゲームをその黎明期から牽引してきたと同時に、モバイルゲームにもiモード時代からいち早く取り組んでいる。また、AIを活用した育成シミュレーションゲーム『アストロノーカ』や、実写ミステリーアドベンチャーゲーム『ユーラシアエクスプレス殺人事件』など、ユニークなオリジナルタイトルをいくつも生み出してきた。さらには『スターオーシャン』や『ヴァルキリープロファイル』といった人気RPGシリーズでも、エグゼクティブ・プロデューサーを務めている。齊藤氏がプロデュースを手がけたゲームのなかでも、特に注目を集めているのが、2017年に発売された『ニーア オートマタ』だ。カルト的な人気を得ているヨコオタロウ氏の世界観と、アクションゲームに定評のあるプラチナゲームズの開発力を組み合わせることで、全世界累計出荷・ダウンロード販売数300万本を超えるヒットを達成しただけでなく、複数のアワードで2017年のGOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)に選ばれるといった高評価をも獲得している。『ドラクエ』というメジャータイトルから、個性的なオリジナル作品の『ニーア』まで、多種多様なゲームを確実に成功へと導く齊藤氏のプロデュース能力とは、いったいどのようなものなのか。そこで今回は齊藤氏と、これまでに齊藤氏と仕事を共にしてきた3名の方々による座談会を企画した。藤澤仁氏は『ドラクエX』で、そしてヨコオタロウ氏は『ニーア』シリーズで、それぞれ齊藤氏とゲーム作りを行ってきたディレクターである。また安藤武博氏は齊藤氏の直接の後輩であり、同じプロデューサーとしてその仕事ぶりに接してきた人物だ。5時間近くに及んだこの座談会は、アルコールが入ったこともあり、かなりフランクな雰囲気で行われた。そのため『ドラクエX』や『ニーア オートマタ』の舞台裏から、旧エニックスのエピソードまで、インパクトのある話題を次々に聞くことができた。そしてそこから見えてきたのは、「直接ゲームを作らない」プロデューサーが、人と人とをつなげて創作の現場を作り出し、クリエイターの創作を支えている姿である。
https://news.denfaminicogamer.jp/interview/180825a