クトゥルー神話って日本でどう広まったの?『デモンベイン』が安心感を与え、現代怪奇としての『クトゥルフ神話TRPG』がニコニコ動画にマッチし、『ニャル子さん』がブーストさせた【インタビュー:森瀬繚】
2017年でクトゥルー神話は誕生100周年を迎えた。ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品に始まったその世界は、彼と彼の友人を繋ぐコミュニケーションツールとして広がり、やがてその世界は神話となった。こと日本では、アナログゲーム『クトゥルフ神話TRPG』や、テレビアニメ『這いよれ!ニャル子さん』の影響が大きく、クトゥルー神話自体には詳しくなくとも、「SAN値」というワード、あるいは「ニャルラトホテプ」といった名前などを一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。また人気のスマホアプリ『Fate/Grand Order』では、2017年11月からクトゥルー神話ネタが登場している。そのため、そこからクトゥルー神話の存在を知った方もいるかもしれない。しかしクトゥルー神話がどのようにして日本で広まり、神話の体系がどう生み出され、いまクトゥルー神話界隈がどうなっているのか──ということを整理する機会はなかなかない。そこで今回電ファミが企画したのが、クトゥルー神話研究家の森瀬繚氏へのインタビューである。氏は『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』や『図解 クトゥルフ神話』の著者であり、テレビアニメ『がっこうぐらし!』や『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』では、脚本の一員として参加している人物だ。本稿ではそんな森瀬氏に、クトゥルー神話の定義に始まり、1950年代から現代に至るまでの日本におけるクトゥルー神話の広まりかた、そして2018年からスタートしたラヴクラフト作品の新訳に関する取り組みまでを尋ねた。クトゥルー神話がここまで広がった起爆剤のひとつである『クトゥルフ神話TRPG』についても、神話体系とビジュアルイメージという両面からその実像に迫っている。氏が言う「我々は『クトゥルフ神話TRPG』が作り上げたクトゥルー神話像の中に生きている」とはどういう意味なのか。なお本稿では、森瀬氏の方針に則り、今日のゲーム業界では一般的にクトゥルフ(Cthulhu)と呼ばれているものをクトゥルーと表記している。氏いわく、『クトゥルフ神話TRPG』の影響で「クトゥルフ」という発音が広がったが、小説では「クトゥルー」が主流であり、なおかつアメリカ・ヨーロッパにおける国際的な標準発音が、2017年現在「クトゥルー」となっている。そのため、「クトゥルフ」と呼ぶのは日本特有の文化であるとのことだ。
https://news.denfaminicogamer.jp/interview/180816