旅と嘯く|150万画素|note
  イトウトモヒロが死んだ日の朝、空は半分曇っていて、半分晴れていた。  梅雨が明けかけていて、日光がじりじりとひりつきだした、そういう時期の、曖昧な空だった。  そういう日の朝に、イトウトモヒロは車に轢かれて死んだ。煙に巻かれた。彼が私のことを好いていたと聞いたのは、それからひと月ほど後のことだった。    見知らぬ女と、旅に出ることとなった。職場近くの書店で、アルバイトをしている女であった。私よりここのつ下の、女のこどもである。  また、女は時折、イトウトモヒロであった。女の臓腑の一部がイトウトモヒロなので、女の記憶がイトウトモヒロになり、女のこころもまた、時折、イトウトモヒロにな
https://note.com/gasoko0150/n/ndffe16979450