「専門って浅いんですよ」 発言がブーメランになった!「統計学の専門家」藤井聡京大大学院教授【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)
2021年5月からスタートした飲食店を運営する「グローバルダイニング」が東京都を訴えた裁判が、2月7日に第6回の法廷が東京地裁で開かれた。今回は原告側の証人として京都大学大学院教授・藤井聡氏が政府のデータを統計学的に分析をした結果について専門家としての証言をしたという。
法廷では「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の資料で、21時以降の人出抑制は感染対策上「有益」と記されていることについて、「有益」なる単語は統計学上存在しないと断言。統計学的に問題となるのは恣意性を排した「有意」か否かだと断じた。その上で、分科会資料と同じデータを使用し、大学の学部生レベルの一般的な手法で再度分析したところ、21時以降の人出抑制は「有意でない(意味がない)」との結果になったと証言したという。
閉廷後の記者会見でも藤井教授は、政府や東京に対して舌鋒鋭く批判を展開した。
「有意でないことを隠蔽する形で、人出を減らせば感染者も減らせて有益だとした資料は欺瞞的。都は、その資料について学部生レベルの統計学的検証もせず、漫然と時短命令を出して国民の自由を奪ったことは極めて悪質だ」
政府分科会が無能であるかのように断じ、緊急事態宣言やまん延防止策は不当であると訴えた。藤井教授の都や政府への批判は止まらない。今回のデータに用いられたのは、実行再生産数・二十一時の人出・気温等だという。そのデータを分析した結果があまりにもひどいと感じたのか怒気を含んで言い放った。
「特に効果があるものは見出せなかった。皆さん、時短すると少なくとも効果があると信じてらっしゃる」と前置きし、「今回分析して、時短しても効果があると言えないと非常に感じました。統計学的に証拠がない。繰り返し繰り返し何回も分析した。何故かと考えたら、二十一時以降の時間がこの世から消え去っていれば、効果はあるかもしれない」と語るも、
「時短をすると統計学的な確たる証拠がないまま国民の自由を奪い続けるということは事実であるということが本日明らかになったものではないかと個人的に認識しています」
このように東京都と政府を糾弾した。藤井教授は都市工学の専門家で統計を用いたデータを活用して研究をしている。もし、藤井教授の言う通りならば、政府分科会は何の意味もなさないデータを基に緊急事態宣言やまん延防止策を発令していたことになる。
ところが、藤井教授の記者会見での発言に統計学の専門家から疑問符が付けられた。それは藤井教授が会見で述べた「単位根検定」について。
藤井教授は「単位根過程だから統計的に意味がない」と言ったが、まったくのデマだという。専門家がいうには「そもそも単位根検定は帰無仮説(統計学上の仮説、ある一つの変数が他の一つの変数、もしくは一群の変数と関係がないとする仮説。 あるいは二つ以上の母集団の間の差がないとする仮説)が「単位根がある」だから棄却できないからと言って単位根があるとは言えない」という。
つまり、藤井教授が「単位根過程だから統計的に意味がない」というのはあまりにも乱暴な結論になるという。さらに「コロナは非定常(定常過程の条件を満たさない場合)で、ノイズが多く頻度論ないし検定は向いてない」という。「そんな状況で有意水準1%で棄却できなかったら意味がない」といったら何もできなくなるそうだ。
他の専門家からも藤井教授へ痛烈な批判が飛ぶ。「単位根検定が棄却できないので単位根がある」というのはド素人レベルの間違いで、恥ずかしいと思わないといけないくらいだと言い切られてしまった。
しかも藤井教授は新型コロナウイルスの統計分析に感染症疫学モデルを使わずに行った疑いまで持たれる始末。おまけに感染症みたいにデータの生成の力学がモデル化できる場合はモデルが妥当かどうかを検証するのが常識だという。藤井教授のように力学モデルを無視して、恣意的に選んだ時系列を統計的検定するのはあり得ないそうだ。
藤井教授への批判は統計学の専門家だけに留まらない。現役の医師からも「人出と感染が無関係」とか正気かという話。じゃあどうやって感染するのだ」と呆れた声が聞こえる。 それもそのはずで、イギリスの週刊一般医学雑誌「The Lancet Digital Health」では、携帯電話の位置データを使用し、人流と感染発生率が関連する研究をしていた。結果は、週の移動度が10%低下すると翌週の新型コロナ発生率が8.6%低下したという。データの母数はラテンアメリカの314都市のデータから導き出している。
面白いことに論文には他のデータも引用されており、アメリカの研究では9〜12日後に人流抑制の最も強い影響があらわれ、またイタリアの研究では9〜10日後に発生率が下がるという結果が出たそうだ。
つまり、藤井教授が断言した「時短しても効果があると言えない」というのは統計学的にも医学的にも間違いであると証明されてしまった。
実は藤井教授は昨年の夏も統計でやらかしをしている。デルタ株が猛威をふるった時に、コロナ感染に対する「自粛」の影響は統計学的に検出できないが「気温」の影響が支配的だという事を示した実証論文を発表している。この論文も統計学を使い、医師の査読を経たうえで発表された。しかし、藤井教授はここでも初歩的なミスをやらかしていた。
この論文で使ったのが「ステップワイズ法」という手法だったのだ。ステップワイズ法は、医療統計・疫学の専門家の間で「ステップワイズ法を使うのは、臨床を知らない統計屋がやること」「ステップワイズ法を用いたら即クビだ」と言われるほど最低最悪な手法だという。
その問題点は「結果を見ながら変数を選択する」という手法だという。本来使用する変数は、解析をする前にすべて決めておかなければならない。しかし結果をみてからだと、本来関係ないのにたまたまいい結果が出た変数を過剰に優遇してしまうリスクが出てしまう。それにたくさん変数があると、たまたま目的変数に影響するデータが出てきやすくなる。
つまり「結果を見てから入れる変数を決めたら意味ない」ということである。
ついでに言えば、ステップワイズ法を用いると最終モデルに到達するまでに、多くのP値が計算され、データを細かく見すぎることで再現性が大きな問題になることが医療統計の分野では知られているため用いてはいけないと言われているのだ。
そう、藤井教授は統計学で二度もやらかしをしてしまったことになる。統計学の専門家としてはあるまじき行為だといえるだろう。
そもそも藤井教授は、コロナは風邪なので自粛の必要はないと当初から訴えてきた。自粛派への反論として「今、「自粛派」になってしまっているのは、コロナに壊される「社交」を持たない人々」と断罪して批判をした。2020年12月、「WeRise」という団体のイベントに参加し、講演で「コロナがあったら、飲んでもいい」などと発言するほどコロナ軽視論者として言論活動を続けてきている。現在もコロナを5類にするように求めており、政府や地方自治体のまん延防止や緊急事態宣言は不要と訴えている。
しかも、自説の正しさを訴えるために死生観という言葉を持ち出し、「多くの国民に感染死をイメージさせたこの度のコロナ禍は、日本人に「死」の問題を改めて向き合う機会を半ば強制的に与えた。結果、多くの人々は慌てふためき、過剰とも言える反応に終始した」と言ってのけた。その結論は「人はいつか死ぬのだからコロナ如きで慌てるんじゃない」である。
コロナが藤井教授のいう「如き」で済むならその言葉も説得力が出てくるが、実際はどうだったのかはご存知の通り。オミクロン株による死者はデルタ株を超えた。そんな現実を直視せず、デルタ株で医療崩壊したときには、「コロナと無関係な医者達はカネにならないからという理由でコロナ緊急医療に真剣に取り組まず、いつまで経ってもコロナ対応病床は増えない」といい、「コロナでカネが稼げる医者(尾身氏や岡田氏等)は、コロナがヤバイということにしておけば仕事がずっとやってくるので、ひたすらコロナはヤバイということをメディア上であおり立て、その結果、コロナ禍が一向に収まらなくなってしまっている」と的外れな医療批判を展開した。
藤井教授に聞きたい。
「整形外科やあなたのお友達の精神科医和田秀樹と終末医療専門医の森田洋之、臨床経験ゼロの木村盛世に感染症の知識があって治療や診察ができると思っているのか?」
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/1343889/