【小説】マリコの想い|舟崎泉美|note
誰もいない車内で彼女はなぜ私の隣に座ったのだろう。 彼女を通り越し通路の向こう側をちらりと見る。平日の新幹線自由席は、人が少なく空いている。 この席に座らなければいけない理由。もしかして、それは私なのかもしれない。 「あの? どこかでお会いしましたっけ?」 私より一回りほど下、20代前半だろうか。とてもキレイだが、口元の大きなほくろが、やけに目出つ女性。少しうつむき加減の彼女を下から覗くように見る。 怒っているのだろうか泣いているのだろうか、唇をかすかに震えさせながら彼女は答える。 「あなたに聞いてほしいことがあるの」 もし会っていたら、失礼だと思いつつも彼女に問い
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