
ピアノを弾きながら歌う女性の耳元を彩る、イヤホン。模型やガジェットを組み合わせ、ヘッドセットやジオラマを作り上げる造形作家・池内啓人氏が手がけた作品だ。 https://youtu.be/65dpOniBbcQ
中国で活躍する歌手・圏9から依頼され制作した本作品の舞台裏を、池内氏に伺った。
池内啓人(いけうち・ひろと)
ジオラマ造形作家
https://www.foriio.com/ikeuchi-products

——海外アーティストからの依頼は、どのような形でくるのでしょうか?
池内 基本的には知人経由が多いですね。今回はスタイリストMIYABIさんを通してご相談いただきました。
内容は、中国人歌手圏9さんの楽曲『極樂淨土』のMV内で使うイヤホンを制作してほしいというものです。イメージも具体的で、僕が以前制作した1/144スケールのウイングガンダムゼロカスタムを使ったイヤホンを1/100スケールで作ってほしいというものでした。
——スケールを変える作業で、苦労されたことはありますか?
池内 スケールを大きくするというと、単純な内容に見えますが、重量が増えるため各所に工夫が必要でした。わかりやすい点で言えば、耳から落ちにくいような工夫でしょう。重量が増えても負荷の少ないヘッドホンタイプへの変更も検討しましたが、イヤホン自体の軽量化はもちろん、ヘアピンなどで固定しやすいような設計へと調整しています。
——最終的な利用者が決まっていたからこその工夫はありましたか?
池内 今回、色等はアーティストに合わせ調整をしています。たとえば下地のホワイトには少しパールを混ぜ、女性らしさを表現しました。他にも、耳の部分には圏9さんのモチーフである「9」をあしらっています。

楽曲の世界観を意識して作ることはあえて行いませんでしたが、スタイリストさんとの連携が取れていたので、衣装との相性はバッチリでした。僕の作風をよく知ってくださっていこともあり、イヤホンの世界観を意識し衣装を制作していたようです。MVの撮影現場で衣装を見たときは、感動しました。
モデルさんやアーティストさんが装着した姿を見たいので、イヤホンに限らず、撮影に使うアイテムを納品するときは必ず撮影現場にも同行するのですが、今回はよくまとまったと思います。
——今回のように依頼が先にあって制作がスタートするケースは多いのでしょうか?
池内 基本的には自主制作物として作ることの方が多いので、誰かの依頼に合わせることは多くありません。アーカイブにレンタル依頼が来ることがほとんです。自主制作の作品は基本的に女性が身につけることを想定して作っているので、利用される方の多くは女性です。
——モデルを女性にしているのはなぜでしょうか? 池内 アニメやゲームによく登場する、大きなヘッドセットや耳をつけた女の子が元ネタなんです。今回のイヤホンは、1997年に発売されたゲーム「To Heart」に登場するロボットの女の子・マルチに、大きな影響を受けています。
マルチに出会ったのは小学生のころでした。当時の僕はものすごく衝撃を受け、一気に虜になってしまいました。物語の中では、姉妹機としてセリオ、イルファ、シルファなども登場したのですが、僕はマルチが一番好きでしたね。
——大きな耳がついたロボットの女の子への憧れを、作品として具現化されたのですね。 池内 実際形にできるなと思ったのは、Bluetoothのイヤホンが出てきたタイミングでした。マルチの耳は衛星と通信をするもの、つまり実用的なものだったので、耳に着用するものも実用的でなければ世界観を守れない。
その世界観を実現するテクノロジーが、Bluetoothでした。「マルチの耳が作れる!」と思い制作したところ世の中的な反応もよかったので、現在も作り続けています。
引き続き、憧れを再現していきたいと思います。
ーーー
造形作家・池内啓人の クリエイティブの裏側に迫る制作ノートシリーズ
foriioって?
foriioはクリエイターの方が、
簡単にポートフォリオを作成・管理できるサービスです。  
foriioでは、成果物だけではなく、クリエイターのこだわりや人となりを知れるインタビューを企画しています。foriioに登録して頂いたクリエイターの投稿の中から作品をピックアップして制作の裏側に迫るインタビューをさせて頂いておりますので、ご興味あるクリエイターの方は是非ご登録ください。
foriioに無料で登録 https://www.foriio.com