「萌芽」ーほうがー【#旅する日本語】|池田あゆ里@インタビューライター|note
2020年10月、AM5:17。日の出まであと少し。夫と伊豆の城ヶ崎海岸に来ている。 いつになく楽しそうな夫は、崖のギリギリのところまで行ってしまう。 「待って、怖いよ。落ちたらどうするの」 お構いなしに先頭を歩いてく。 いつもそう。わたしたちは「アヒルの親子」のように縦でしか歩けない。彼がどんどん先に行ってしまうから。 「ほら、来たよ。朝だ」 一点の真っ赤な光が、海と空の境界線できらりと光った。 それは、朝の始まりを告げる神聖な光だった。 振り返った彼の顔が、光に溶けて見えない。 この光を、この人といつまで迎えることができるだろうかと、ふと思った。 「萌芽」。そ
https://note.com/amayuri4/n/n880f77b6a596